ロジン入りチョークについて


 
こんにちは、川上店の王鞍です。
今回はチョークを選ぶ際に気になる成分の話をしたいと思います。
 
最近、御岳や鳩ノ巣エリアでのロジン入りチョークの使用が問題になっていますね。
 
ロジンとは松ヤニのことで、英語ではrosin、resin、colophonyなどと表記されます。
 
 松ヤニって自然由来だし岩場で使って何が悪いの?と思われるかもしれません。
では、このロジンのなにが問題なのでしょうか。御岳以外では関係ない話なのでしょうか?
実際にロジン入りチョークを使うことによる問題点を改めて調べてみました。
 
 

1. ロジンフリーのチョークに比べて落としにくい
 
 ロジンはアルコールに溶け、手に塗ると体温で粘性を持ち、岩にくっついて冷えると固まります。
ホールドに付着したロジンは雨やブラッシングだけでは落ちず、岩の色によっては白く目立ってしまいます。
このため、御岳などでは景観を損ねる可能性があるとして問題になりました。
もちろん、厳密なオンサイトを狙うクライマーとしてもこれは気になるところです。
 御岳クライマーズコミュニティが御岳ボルダーのチョークの清掃を行った際、ロジンがいかに落ちにくかったかという報告も上がっています。
 

 
忍者岩を洗浄する様子
 
では、観光地以外では問題にならないかというと、そうではありません。
 

2. 岩やジムホールドのフリクションが低下する
 
 2つ目のポイントではクライミングのパフォーマンスと岩そのものに影響してきます。
ロジンがホールドの細かな凹凸を覆うことでフリクションが乏しくなると報告されています。
コロナによりジムでロジンの入った液体チョークを使用するクライマーが増え、これまでの定期の洗浄では間に合わない速度でホールドがツルツルになっているといいます。実際にロジンの使用を禁止しているジムも多いです。
 ロジン入りチョークの発祥の地と言われるフォンテーヌブローでも、ロジンが砂岩の小さな孔に入り込んでフリクションがなくなりつつあるとして問題視されています。
 

 
 また、フリークライミングの倫理的な観点からも論争があります。
チョークとは滑り止めではなく、あくまで手の油分・水分量を調節する道具であり、コンディションを“ベスト”に近づけるために使用します。
対してロジンはそれ自体が粘着性を持ち、本来手と岩が持つフリクション以上のものを生み出すことがあります。そのため、ロジンはエイドだ!という過激な意見もあります。
ただそれを言うと、ラバーソールのクライミングシューズはどうなのでしょう。
これに関しては各クライマーが、自分が使うのはアリかナシかを個別に考えれば良いと思います。
 
 
 さて、ロジンの実際的な問題点を見てきましたが、ロジンが絶対悪であると決めつけるべきではないと思います。
岩質やエリアによっては問題にならない可能性もありますし、自宅のウッドホールドでのトレーニングなどでは有効です。
 
 逆に、影響の程度に差があるものの、ロジンと同様にフリクションの低下という問題が粉チョークについても言えそうです。
前述したブローではロジンフリーのチョークも禁止にすべきという声が上がっています。
仮に日本でチョーク禁止となったら、すでにチョークジャンキーとなって久しい我々は禁断症状で震えが止まらないことでしょう。
 
 ただ、クライマー人口が急激に増えてきている今では、一人一人のクライマーが自然やエリアに与えるかもしれない影響を考えてみることが大切だと思います。
そしてジムでロジン入りチョークを使う場合は必ずスタッフの方に使用可能かどうか問い合わせましょう。