トラッドクライミングのプロテクションについて



スポートルートのようにあらかじめボルトが打たれていないクラックなどを登るには、自分でプロテクションをセットして安全確保をしながら登っていく必要があります。
こうしたクラックなどのトラッドクライミングで使うプロテクションは、大きくアクティブプロテクションとパッシブプロテクションの2種類に分かれます。
今回はアクティブの方であるカム(SLCD: Spring Loaded Camming Deviceの略称)と呼ばれるプロテクションの選び方について、お話しします。
 
カムを選ぶ際、性能として大きく差の出る点を4つ挙げてみました。
 
1. ステムの硬さ
2. カム軸の数
3. 対応レンジ
4. カムヘッドの幅
 
 
1. ステムの硬さ
カムの幹にあたるステムが曲がらないタイプとフレキシブルなタイプがあります。
ステムが曲がることで水平クラックにセットしても衝撃吸収しやすく、ウォーキング(クラック内部でカムが動くこと)がしにくいというメリットがあります。
逆にステムが硬いモデルは、ヘッドの重さでくたっとなることがないのでセットがしやすいです。
ですので、一般的には小さいサイズのカムはステムが曲がるタイプ、大きいサイズではステムの硬いものがおすすめです。
 
(左)キャメロットC4#3と、(右)マスターカム#8
 


2. カム軸の数
カム軸(アクスル)は1軸(シングルアクスル)と2軸(ダブルアクスル)のものがありますが、これもそれぞれメリット・デメリットがあります。
まず、1軸はステムが左右(トリガーに対して垂直)に動いてもカムローブに力が伝わりにくいため、ウォーキングしにくいです(上下の向きにはウォーキングします)。対して2軸のタイプはウォーキングしやすいのですが、後に述べる対応レンジが広くなります。
また、カムローブが2点で支えられているので、キャメロットの2軸モデルではカムが全開の状態でナッツのようにボトミングしてセットすることも可能です。(右図)

 

 
3. 対応レンジ
カムをプロテクションとして決めることが出来るクラックの幅をそのカムの対応レンジといいます。上で触れたように、一般にカム軸が2軸だとレンジは広く、1軸だと狭くなります。
1軸カムでは一つのカムで決めることのできるクラックの幅が狭いため、2軸のものと同じレンジをカバーしたい場合、1セットを構成するカムの数が多くなることがあります。

 
(左)2軸のキャメロットZ4(レンジ:18.8mm-33.9mm)と、(右)1軸のトーテムカム(レンジ:20.9mm-34.2mm)
 

 
4. カムヘッドの幅
カムのヘッドの幅が狭い(コンパクトだ)と、幅広のカムが効かないガタついたクラックやポケットなどに決められることもあります。
一般的にカムローブの数が3枚のカムは4枚のものに比べてヘッド幅が狭くなりますが、最近は技術の進歩により、安定性の高い4枚歯でヘッドのコンパクトなモデルがほとんどです。

 
(上)マスターカム#8(ヘッド幅:約42mm)と、(下)キャメロットC4#3(ヘッド幅:約56mm)
 
 
上にあげた4つのポイント以外にもサムループの有無やカムローブの材質、作りの丈夫さなど様々な考慮すべき点があるため、これらを総合的に見て目的に合ったカムを選ぶ必要があります。
初めてカムを購入する場合は、ショートルートに使いたいのか、マルチやアルパインかなどの使用目的やエリアを専門店でスタッフに伝えて相談することをお勧めします。
また、手のサイズによっても扱いやすいカムは変わってきますので、購入前に実際に手に取ってみることが大切です。