スキー用具のメンテナンス

スキーはそろそろシーズンオフを迎える時期になりました。

シーズン中使った用具もお手入れをしてコンディションを整えてから保管してあげたいですね。
今回はそのお手入れのお話です。

まずはスキーのお手入れの方法をご紹介します。

良いコンディションを保つ上でまず気をつけなければいけないのは、汚れを放置したり濡れたままにしないこと。スキーは屋外の雪上で楽しむスポーツですから、汚れや濡れにさらされやすいものです。汚れは見た目がみすぼらしくなるだけでなく、滑走面やスキーそのものを痛める原因にもなりますし、水分が残っているとエッジの錆や樹脂の劣化につながってしまいます。

スキーを楽しんだ後はウエス等で水分をふき取り、汚れをしっかり落としてあげましょう。特に春の雪は水分が多くなっているし、雪面には汚れの原因になる成分が多くなっているので注意が必要です。

ウエスで拭う

水気を拭き取ったらスキー板をチューンナップ台に載せ(ビンディングのブレーキを太めの輪ゴムなどを使い邪魔にならないように上げておくとよいでしょう)滑走面のトップからテールの方向に向かってスクレーパーを当てて、滑走中に付着した汚れや古いワックスを剥がしてゆきます。

スクレーパー掛け

エッジに錆が生じている場合はサンディングラバー(研磨ゴム)やサンドペーパーを使って落としておきます。サンドペーパーを使う場合は極細目の1000番程度のものを用いますが、錆がひどい場合は最初に細目の240~360番くらいのもので錆を落としてから、1000番程度のサンドペーパーを使って仕上げると良いでしょう。
錆が進行してしまうと落としきれなくなるので、なるべく早いうちに処置することをお勧めします。

サンディングラバーを使ったエッジの錆とり

サンドペーパーを用いる場合は木片などに巻いて使う

滑走面の汚れやエッジの錆がある程度落とせたら、リムーバーを使ってクリーニングします。滑走面にリムーバーをかけて、ワキシングペーパー又はキッチンペーパー等などで拭き取ることにより、しつこい汚れや油分を落とすことが出来るので、しっかりクリーニングが行えます。

リムーバーをスプレーする

ペーパーで拭きとる

さらにストラクチャー(滑走面の溝)に入り込んだ汚れを、ブラシを使ってかき出すとしっかり汚れが落とせるでしょう。
ブラシにはいろいろな種類がありますが、ブロンズブラシや真鍮ブラシを使用すると毛先が細く、ストラクチャーの溝に入った汚れをかき出すことができます。

ブラッシングをする

ブラシでこすると滑走面がケバ立つので、仕上げにファイバーテックスで磨いて余分なケバを取り除くと良いでしょう。

ファイバーテックスでケバを取り除く

滑走面の汚れがそれほどひどくなければ、リムーバーを使わずにそのままアイロンを使ってワックスをかけてクリーニングする方法もあります。その場合、ワックスを滑走面全体にかけたら、すぐにスクレーパーを使ってワックスを剥がしてしまいます(冷めるまで待つ必要はありません)。
こうすることにより汚れの成分がワックスの中で浮き上がり、スクレープすることで汚れを取り除くことができるのです。

アイロンを使ったホットワキシング

リムーバーを使うと浸透しているワックスも拭われてしまうため滑走面をワックス掛けする前の状態にリセットしてしまうのですが、ワックスを使ったクリーニングの場合は汚れを浮かせているだけでワックスを剥がしている状態にならないため、ワックスの定着性を壊さずにリフレッシュすることができます。

どちらの方法が良いのかは汚れの状態等をみて使い分けると良いでしょう。

スキーのクリーニングが終わったら最後にワックスを掛けなおし、次回スキーを使うまでワックスを剥がさずに保管すると良いでしょう。こうすることにより滑走面が空気に触れず酸化を防いでくれるとともに、エッジも錆難くなります。

ワックス掛けをしたら剥がさずに保管

滑走面の状態が悪くなっていたり傷んでいる場合は、チューンナップサービスをご利用いただくと良いと思います。
エッジを研磨して立て直し、滑走面も薄く削ることによりリフレッシュします。滑走面に傷がある場合は同時にリペア作業も行えます。
これらの作業は専用の機械を使って行います。シーズン中で10日~2週間程度、シーズンオフで1月~1月半程度お預かりすることになりますので、お時間の余裕をもってご依頼ください。

チューンナップサービスの詳細はこちら

 

スキーにはビンディングが取り付けられていますが、こちらも良いコンディションを保つために気を付けなければいけないことがあります。

基本的なことではありますが、使用後にウエス等で水分をふき取り、汚れを落とすのを忘れずに行いましょう。
ビンディングはシンプルなものもありますが、スプリングユニットなどがカートリッジの中に収められていたり、リリース機能がついているものなどはメカニズムがユニットの中に組み込んであったりして意外とデリケートなものです。
金属のパーツなどが使われているため錆にも気を付けたいものです。中に水分が入ってしまうと乾燥するまでに時間が掛かる場合もあります。

ビンディングもウエスで拭く

動きが悪くなっている部分がある場合は、グリスを塗ってあげたりするメンテナンスを行うこともありますが、その際はプラスチックパーツ等に影響を及ぼさない専用のグリスをお使いください。

グリスアップには専用のグリスを使う

ロッドのフックポイントへのグリスアップも

グリスや潤滑剤にはたくさんの種類のものがありますが、中にはプラスチックパーツ等に影響を及ぼしてしまうものもあります。誤って使うとこれが原因でプラスチックパーツが割れてしまうことがあるので注意が必要です(よくあるのが、一般家庭などでも普及しているCRC 5-56をプラスティックパーツに使用してしまったケース。CRC 5-56の潤滑剤に気化させるための溶剤が含まているのですが、これをプラステックが吸収してしまい時間が経つと割れを生じさせてしまうことがあります)。
また、グリスが塗ってある部分にスプレー式の潤滑剤を吹き付けるとグリスが溶けて流れ落ちてしまうことがあります。そうなると逆に動きを悪くしてしまうことになるので注意してください。

潤滑剤によってはプラスチックを痛めてしまうことも

ビンディングには怪我を防止するため、無理な力が掛かった時にリリースする仕組みを組み込んだものがあります(すべてのATスキービンディングと一部のテレマークスキービンディングに備わっています)。
これらにはバネが使われていますが、ずっと締め付けたままにしておくとバネの戻りが悪くなる(ヘタる)ことがあります。解放値の調整機能があるものはシーズンオフには解放値を緩めてバネをリラックスさせてあげると良いでしょう。

バネを緩める

 

ブーツのお手入れもきれいにして乾かすことが基本です。

スキーから帰ってきたら汚れを落として、ウエス等で水分をふき取り、インナーブーツやインソールが取り出せるタイプのものは取り出して乾かしてあげましょう。

 インナーやインソールを取り出して乾燥

プラスチック製のブーツは水分を吸収して素材が分解してしまう加水分解の問題を抱えています。加水分解そのものを避けることはできませんが、工夫次第で起きにくくする(加水分解に至るまでの時間を長引かせる)ことはできます。
汚れや水分を付着させたままにせず、湿度の低い状態で保管する(乾燥剤などを利用すると良い)「クリーン&ドライ」を心掛けてあげましょう。

テレマークスキー用のブーツには革製のものもあります。これは大事に使えば長年使うことも可能です。
こちらも基本は同じで「クリーン&ドライ」。革の場合、加水分解のことは考えなくてもよいですが、汚れや水分が残っているとカビが生えたり、バクテリアが繁殖して臭いが生じやすくなってしまいます。
また、シャンク(中板部分)にプラスチックが用いられていたり、ソールを貼り付けるために接着剤が使われています。これらを良い状態に保つためにも「クリーン&ドライ」を心掛けてあげましょう。

革製の場合はブラスチック製品より乾きにくいので注意が必要です。表面は乾いたように見えても、内部は水分をたくさん含んだままということもあるので、十分に乾かしてあげるようにしましょう。

あと、濡れたり乾いたりを繰り返していると、革がカサカサになって傷み気味になってしまうことがあります。そのようなときは保革用のワックスを塗ってあげると良いでしょう。保革ワックスの中には防水性(撥水効果)を高める成分を含んだものもあります。
ただし、可愛がるあまりワックスを塗りすぎてしまうのもよくありません。革が柔らかくなりすぎてくにゃくにゃになってしまうので…(何事もほどほどに)

保革ワックスを塗る

他にBCスキーブーツやクロスカントリースキーブーツではシンセティック(合成皮革)や化学繊維が用いられている場合があります。これらも加水分解をはじめとする経年劣化を避けることはできませんが、「クリーン&ドライ」により劣化の症状を抑えることはできます。

バックルの取り付けにネジを用いているブーツは、このネジの緩みなども点検してあげると良いでしょう。動きのある部分や振動が伝わる部分のネジは緩みやすいものです
緩みに気づかず使い続けて、気が付いたらパーツが外れてなくなってしまったという相談が時々あります。部品を取り寄せるのに時間も掛かるし、余分な出費も生じてしまいますのでなくさないに越したことはありません。シーズンオフに向けて保管する際やシーズン初めに点検して、緩みがあるようであれば軽く増し締めしてあげましょう。

ネジの増し締め

 

スキーとビンディング、ブーツを保管する際は、直射日光が当たる場所や高温になる場所を避け、屋内にしまうようにしましょう。
用具のコンディションが良ければ来シーズンのスキーも楽しいものになると思います。