3年越しのクライミング

金華山のクライミングエリアへのアプローチ。ひたすら海岸沿いを歩きます。
11月の頭、私がクラッククライミングを始めるきっかけとなった島、金華山へ行ってきました。

金華山は宮城県石巻市にある島です。金華山黄金山神社という神社があり、島全体が神域となっています。
3年連続で参拝すると一生お金に困らないとか、そこでお金を洗うとお金持ちになれるとか魅力的なパワーが満載な
スポットです。

私も例にもれず、この島に初上陸した際に一瞬にして心を奪われ、絶対にここを登るんだと心に決めたものでした。


 
海岸沿いには魅力的な花崗岩が顔を覗かせています。取りつきに降りられるかが第一核心。
 
けれども金華山でのクライミングはそう簡単にはやらせてもらえません。

島での登攀は適切な許可が絶対条件。船便は金華山のお祭りの時期でないと運航されていないし、行きと帰りの間隔が短いため
個人的に船をチャーターしなければ時間が足りません。やっと許可と船が用意できても、高波で船が出ないことも多々あります。
その他にも天候や社会状況の兼ね合いで計画の見送りを強いられたこともあり、「金華山でクラックを登る!」と心に決めてから
3年が経ってしまいました。
目を凝らせばプアプロラインが見えてくる...! さすがに取りつく勇気はありませんでした。
金華山に渡る前日から、登れる喜びで私の頭の中はお祭り騒ぎになっていました。

明日万全な状態で登れるよう夕飯に出されたビールには一切手を付けず、しっかりとストレッチを完了させて小学生並みの時間に就寝。
当日朝は小雨がパラついていて不安な気持ちになりましたが、10時にはやむと教えてもらい気分は上向きに。移動の船の上と
到着後30分のアプローチは浮足立って、そのまま小走りしそうになるのを必死で抑え込んでいたような感じでした。

そしていよいよ取り付きに到着です。

今回トライした場所は海沿いの断崖絶壁で懸垂下降をする必要がありました。
上からクラックを覗こうにも若干被っていて全貌はわからず、一度登った方のアドバイスをもとにカムを2セット+@を抱えて懸垂下降。

下から見上げたクラックは塩水と朝までの雨に若干湿っていました。

普段は主に山の中で登っている私にとって、後ろから高波が襲ってくる状況でのトライは未知の世界。
出だしの塩水で濡れたクラックをビビりながら通過して、湿ったワイド地帯へ高度を上げていきました。聞こえるのは荒れた波の音と、
緊張で少し荒い自分の息づかいのみ。ちょっとワイドでもたついて、ムーブが決まったと思ったら突然のフォール。
完璧な足のスリップでした。

その後はまた若干の緊張とワクワク感の中で登り切り、1テンという形で3年越しのクライミングを形にしました。

高波と轟音の中を登ります。かなり緊張しました。
グレードは5.10aくらいと言われていましたが、そのルートにかける想いはグレード以上だったと思います。

私が初めてこの島に誘われたきっかけは、5年前のことです。島でボルダリングをしようと言われたからでした。

しかしいざ上陸して周りを見渡せば、花崗岩の岸壁にきれいなクラックが走っている風景に目を奪われました。
その当時の私はクッラク登攀技術を持っておらず、取りつくことができませんでしたが、逆にクライミングの可能性を感じた瞬間でも
ありました。そして「クラックを登れるようになれば、この島を遊びつくせるんだ、絶対に登ってやる!」と密かに決意を持つ
きっかけになりました。

けれどもその後、練習を始めてから改めて島に来てみれば、新しくラインを見つけ出す目、安全に登りきる技術などなど、色々なものが
足りないことを痛感することになりました。
「あそこのクラックが最後まで繋がっていれば」、「もう少し深ければ」等思うことはたくさんあったのですが、全ては自分の経験と力量不足です。

トポを片手に開かれたルートしか登ったことのない私に、新しい世界を見せてくれた金華山。
未知の壁に挑むワクワク感、難しさ、それら全て孕んだクライミングを楽しむには知力、体力がまだまだ必要だと気づかせてもらいました。

これからもあちこちでたくさん登り、また年に数回のチャンスを狙って、今度は自分でルートを開くべく渡島したいと思います。


目白スタッフ 大竹