甲斐駒ヶ岳で継続登攀


スーパー赤蜘蛛核心ピッチ
 
こんにちは。カラファテ川上店の王鞍です。

10月の終わりに甲斐駒ヶ岳にて、赤石沢奥壁の「スーパー赤蜘蛛」と「中央稜」を日帰りで継続してきました。
 
1949年に登られた「奥壁中央稜」はこの壁の初登ルートで、「スーパー赤蜘蛛」は1991年に鈴木昇己さん、篠原達郎さんが赤蜘蛛ルートをフリー化して完成させた、どちらも甲斐駒ヶ岳を代表するルートです。
赤石沢奥壁のダイヤモンドフランケA,B,奥壁をつなげると約1000mにもなり、なんと1981年には橋本覚さんらによって竹宇駒ヶ岳神社からワンデイでの継続登攀が行われていたというので驚きです。
 
 
深夜2時過ぎに竹宇駒ヶ岳神社の駐車場を出発。思ったよりも冷え込みは厳しくなく、ヘッドライトを付け半袖で登ります。パートナーの小峰さん(コミネッチ)は上裸でした...。
 
 
七丈小屋で美しい朝焼けと雲海がお出迎え。しばし時間を忘れます。
 
 
ここから数日前に降った雪が少し出てきました。
 
7時ごろ、八合目岩小屋に荷物を少しデポし、スーパー赤蜘蛛の取り付きへ。
 
パートナーは初スーパー赤蜘蛛ですが、1P目は危なげなくオンサイト。2p目は王鞍リードで、ここはオリジナルの2,3,4,5pを繋げてコンテで進みます。
 
2p目の快適なジャムが続くコーナークラック
 
そしていよいよ今回のハイライト、60mのスーパークラックです。僕は去年登っていますが、何度見ても圧倒されるかっこよさ。
 
クロスラインを行くコミネッチ
 
スーパークラックは2003年に平山ユージさんがレッジトゥレッジ(6,7pのリンク)でオンサイトし、国内でも最長レベルのクラックピッチになりました。
グレードは11dや12aなどと言われていますが、大体いつも核心部は濡れている様子。
 
ここはパートナーのオンサイトトライ。クラックマスターのコミネッチはいいペースで登り出しましたが、出だしで左のフィンガーに移らずハンドサイズのクロスラインを直上。クラックが途切れた辺りで左に移ろうとしたところ、カチが欠けて痛恨のフォール。こちらのラインはあまり登られておらず岩が脆くなっていました。
気を取り直して再び登り始め、核心も安定して抜けてぐいぐいと進み、ビレイ解除の声。
フォローするとやはり核心は濡れていました。さすが!と同時にホールドさえ欠けなければ...と思わずにはいられない。
 
とにかく長いスーパークラックをフォロー中
 
ちなみにスーパークラックはトポで70mになっているので最後は同時登攀を考えていたのですが、60mでピッタリでした。
 
最後のスラブは快適に抜け、ロープを畳んで真っ直ぐ登れば岩小屋へ戻ります。
この時点で12時前といいペースです。しかし予想よりずっと暑い!
タイツも上着も脱いで休憩。もちろん山頂は寒いはずなので、しっかり防寒着を持って奥壁の取り付きに向かいます。
 
中央稜取り付きにて。日陰には雪があります。
 
中央稜は難しいところはなく、3p目Ⅳ+,A1もフリーで抜けてあとはブッシュ帯を上がるだけ、、だったのですがここが想像以上にクセモノでした。
 
3p目を少し右からフリーで。半袖でも暖かい。
 
ロックセクションを越えると日陰になり、雪も出てきました。ハイマツがハーネスやロープに引っかかりなかなか進めず、急激に冷え始める。特にクライミングシューズを履いた足は感覚がなくなり、途中アプローチシューズに履き替える時につま先がScreaming Barfiesに襲われ悶えます。
そんなこんなも良いスパイスとなり、薮を漕ぐこと1時間半ほどで主稜線へ飛び出しました。
 
ここからはチェーンスパイクを装着し、15時過ぎに甲斐駒ヶ岳山頂へ到着。週末にもかかわらず最高の天気でのピークを貸切でした。
 
甲斐駒ヶ岳山頂にて
 
荷物を背負ってのクライミングはかなり脚にくるもので、夜中から動き続けて疲れてきた身体に鞭打ち下山します。この下りがとにかく長いのが黒戸尾根。
それでも4時間かけて19時半ごろ駐車場に戻ってきた時にはとても清々しい気持ちでした。
そこまでせかせかせず、約17時間のラウンドトリップとなりました。
 
ちなみに今回は脆いと噂のBフランケは割愛しましたが、かなり余裕があることがわかったので次回は完全な形で赤石沢奥壁の継続ワンデイをしてみたいです。
 
 
ここで今山行に使用したギアを少しご紹介します。
 
 
〇「アスペクト」
足に馴染んでくるとずっと履いてられるほど快適で、スーパークラックのような細目のクラックにジャムがしやすいのが特徴です。ソールが硬いので大きめサイズでもカチを拾えます。
 
履きならしたアスペクト
 
 
〇「スウィフトプロテクトプロドライ 8.9mm×60m」
懸垂下降をしないためシングルロープ1本でいきました。細径で軽いのにも関わらず、岩角に強いアラミド繊維が外皮に編み込まれているためシングルロープとしても強度はバッチリです。
 
 
〇「マスターカム」
今回はキャメロットサイズの#0.3~#3 ×2 + #0.5~#2の約3セット持っていきました。内2セットはZ4とキャメロットUL、そして残り1セットはメトリウスのマスターカム。
マスターカムは据わりの良さとレンジこそ劣るものの、実はキャメロットULよりもかなり軽いのです。特に#6~#8サイズ(キャメの#1~#3相当)は合計でULより60gほどの軽量化になるため、山では大きなアドバンテージです。
 
マスターカム#6,7,8
 
 
〇「トレイルバター」
ギアではなく行動食ですが、これ一本でこの日の摂取カロリーの半分ほどを補いました。コンパクトで高カロリーなのに無添加の超ヘルシーで、しかも美味いという最強の行動食です。胸ポッケに入れてセカンドビレイ中に一口ずつ食べるのに最適。
 
山頂で最後の一口を味わう