スカルパ T4&スコット エクスカーション

テレマークスキーブーツのお話をもう少し。

今回はツーリング向けのローカフモデル(プラスティックブーツ)をご紹介します。
 

スカルパ T4




まずネーミングなのですが、T1&T2エコの記事にあるとおり、Tは「Terminator」からきているのはお判りいただけると思います。2020-21シーズン現在、スカルパテレマークブーツの75mm Nordic NormのものはT1、T2エコ、T4の3種類がラインアップされていますが、ここで疑問が湧いてくるのではないでしょうか? T3が抜けているの何故かと…。

これ、もともとはTレース、T1、T2、T3というラインアップだったのです。そこにT4が加わったのは2001-02シーズンのことで、T3がモデルチェンジされる際に、「(モデルチェンジ)前のT3も評判が良かったので残してもらえないか」という意見があったため、旧型T3のパワーベルトを省略してよりライトにしたシンプルヴァージョンとしてT4が登場することになりました。

時は流れて2007-08シーズンのこと、NTNの登場でテレマークスキーブーツの種類が更に増えることになり、ラインアップが見直す必要性がでてきました。この時にT3とT4のどちらか一種類に絞ることになり、リサーチの結果T4が残りT3が消えてしまったため今のようなラインアップになってしまった訳です。



T3 最終型の+Fit仕様


T4は低めのアッパーシェルと2つのバックルで構成されたツーリング向けのモデルです。T2エコよりも柔らかめの樹脂を用いていることもあり、「チューニングもソフトで、歩きの多いツアーに良さそうだな」とイメージされることでしょう。歩行特性を意識して作られたモデルですからもちろんその通りなのですが、このブーツ、実は結構滑りに応えてくれたりします。

テレマークスキーって用具の構造上、前後方向のバランスをポジションなどの滑走技術に大きく依存している面があります。これが磨かれていれば、ライトな用具でも結構滑れる(ターンができる)ものなのですね。確かにサポート感の高いガッチリしたブーツの方がパワーの伝達性も高いし、スピードをのせても安定感がありますが、腕さえあればT4のような用具でも十分滑れるし、むしろこんな用具だからこそ操る楽しさがあるという見方もできたりします。




スカルパ T4 現行モデル

軽やかで自由度の高い足元は魅力です。これで滑れるからテレマークスキーは楽しいという声もあるくらいです。見た目はちょっと地味ですが、このモデルならではの世界観がある存在感の大きなモデルだったりするのですね。

スキーブーツはスキーやビンディングとの組み合わせて使いますから、用具同士の相性というものがあります。このブーツはライトな組み合わせで威力を発揮します。その辺の用具バランスを考慮してお選びいただければと思います。

T4の商品情報はこちらから
T4
(23.0cm[在庫終了] ブラック)
続いて
 

スコット エクスカーション




Excursionというネーミングですが、辞書を引くと「小旅行、遠足」と出てきます。Tripの意味する「旅行」に対して、Excursionは「レジャーのための日帰りや短期間の旅行[遠足/小旅行]」を指すようで、スキーでいうと「天気の良い日にフィールドに出掛けてゆく1day雪上ハイキング」というようなイメージでしょうか。カタログを見ると「喜びを分かち合う旅」という説明書きがありました。

このブーツはまさしくこのネーミング通りの一足でしょう。ダウンヒルを楽しむテレマークブーツというよりは、BC(バックカントリー)スキー用のギアとして開発されたみたいです。

※BCスキー:テレマークスキーとクロスカントリースキーの中間に位置するカテゴリーで、用具としては幅が広めのクロスカントリースキー(オフトラックスキー)にダウンヒルでの対応性を持たせるための金属エッジを装備したスキーと、クロスカントリースキーのものを強化したような構造のビンデングやブーツが用いられます。ビンディングの規格は75mm Nordic NormとNNN BCの二種類があります(数年前までサロモンが開発したSNS BCという規格のものも販売されていました)。



スコット エクスカーション 現行モデル


実際に履いてみると軽やかで柔らかく「楽しく歩けそう」という感じです。言葉で聞くとスカルパ T4と似ているように思えますが、結構違いもあってこちらのほうがかなり柔らかいです。なんか無性に歩きたくなるブーツというか…。
エクスカーションにはパワーベルトがあるし、T4よりもアッパーシェルに少し高さがあるので、こちらの方がサポート感が高そうにも見えますが、履いてみるとそうでもないのです。むしろこちらの方が自由度が高く、硬さがないので動き回りたくなる感じですね。

滑り(ターン性能)については丁寧に乗れば十分ゆけるでしょう。テレマークターンだってバッチリ決められます。サポート感についてはちょっと頼りなく感じるかもしれませんが、それはそれで面白いのです。「いやいや、これだから楽しいんだよね」という声も聞こえてくるくらいで…。マニアックな世界です、はい。

エクスカーションの商品情報はこちらから

(左)スカルパ T4(右)スコット エクスカーション

スカルパ T4はローカットだけれど割と剛性感があって見た目以上に滑れるし、テレマークターンで操る楽しさが体感できたりします。スコット エクスカーションは柔らかいけれど、だからこそ得られるテレマーク本来の自由と機動力を感じさせてくれるでしょう。
どちらのブーツもフリーヒールスキーとは何なのか、テレマークスキーはなぜ楽しいのか、その原点を再確認させてくれるような魅力を持っています。

その軽快性を生かすためにも、3ピンやG3・タルガなどの軽やかなビンディングと組み合わせて使いたいですね。



天気予報を見ていると、「冬型の気圧配置に~」という言葉を耳にすることが多くなってきました。
いよいよスノーシーズンに突入です。