まずは新製品のATブーツの紹介です。
スカルパ F1&F1 ウィメンズ
BOAシステム+1バックル1ベルトタイプで、材質はシェル/カフ=グリルアミド(ポリアミド) タング=ぺバックスという構成のTECHビンディング専用の超軽量アルパインツーリングスキーブーツです。
F1(メンズモデル)
スカルパのF1シリーズはこれまでもいくつかのモデルが販売されてきましたが、大きく分けると指の付け根に蛇腹が付いた旧タイプと、今日供給されている蛇腹のない新タイプの二種類があります。
F1(初期型) 足指部の蛇腹により高い歩行特性を発揮
旧タイプのF1はレイドレースで表彰台を飾るアスリートが愛用していた常勝モデルでした。「F1を履かなければ勝てない」 そう言われるなんて、ハードウェアとしては凄い存在ですよね。ただレーシングモデルですから、多くの方が使うツーリングモデルとは一線を画す特別なものでもありました。
F1レース 前側のタンを防水生地に置き換えている
そこでスカルパはツーリング向けにチューニングしなおしたF3というモデルを開発します。使い勝手と耐久性を考慮して一般的な金属バックルと樹脂製のタンを採用、軽さでも注目を集めていた熱成形インナーブーツを組み合わせました。この頃から機動力を重視したモデルに力を注いでいた訳です。
F3 同時期に販売されていたツーリング向けモデル
大きな変化が起きたのは2014-2015シーズンです。レイドレース向けのモデルは新シリーズへ移行し、スピードツーリングとでもいうのでしょうか、新カテゴリーとしてF1 EVOというモデルが超軽量アルパインツーリングモデルとして登場したのです。レイド向けの軽量化技術を進化させて、ツーリングモデルとしての使い勝手の良さも融合、ダウンヒル性能、登高性能を見つめつつ新しい発想で開発されたそれはとてもセンセーショナルなものでした。
F1 EVO 新しい取り組みが随所に盛り込まれている
この新シリーズのF1は、これまで一般的だった金属製のバックルという構成を捨てて、ワイドストラップに連結された1バックルサポート、ロアシェルには高いフィット感が得られる巻き上げ式ワイヤーのBOAシステムといった独自の構成でツーリングモデルとしては驚異的な軽さに仕上げてきました。重量だけではなく、高いダウンヒル性能をサポートするねじれ剛性を高めるカーボンコアテクノロジーの採用、登高時に絶大なる威力を発揮するトータルモーション62°という驚異的な可動域を実現したウォークモードもこれまでにはなかったものです。
新タイプの初期型では、革新的な取り組みの陰でトラブルも生じてしまったというマイナス面があったのも事実です。その点は、機能の向上や素材の改良を重ねて順次解決されており、更なる進化も遂げて今日の形にたどり着いているのです。
タンの形状を変更しロアシェルへの引っ掛かりを低減している
実際に使ってみた感想(2018-2019モデルで試乗)ですが、やはり軽さはかなりのものでちょっと衝撃を受けました。でもそれは想像ができたのです(軽さがコンセプトのブーツですからね)。
気になったのがこの軽さでどこまで滑りのパフォーマンスがあるかという点なのですが、これは予想以上でした。軽量化に振ったモデルですからセンター幅80mm台のスキーと組み合わせてライトに楽しむものとイメージしていたのですが、90mm台でも100mm台でも全然OKなのです。スキーヤーによってはブーツのホールド性に求めるレベルに違いもあるかとは思いますが、自分にとってはもうこれで十分という感じです。
それと凄かったのはウォークモードでの動き。少し前までのブーツでは滑走モードでは適度な前屈、ウォークモードではその前傾が解除され直立状態まで可動するのが一般的でした。確かにこれでも十分登れるのですが、F1はもっと可動域が大きく動きが柔らかいので全然楽なのです。
トータルで62°という驚異的な可動域
日本でも導入され始めた捜索システムのRECCO
インナーブーツが少し薄目なので、うんと気温が低いと足がちょっと冷たいと感じるかもしれませんが、このブーツのキャラクターとしては天気の良い日にミニマムな装備で行動範囲を広げるというような使い方が似合うと思うので、深刻な問題ではないような気がします。その分高い機動力が手に入るのですから、そこを活かしてゆきたいですね。
続いて
スカルパ マエストラーレ&ゲア
マエストラーレがメンズモデルでゲアがウィメンズモデルになります。いずれも3バックル1ベルトタイプで、材質はシェル/カフ=ぺバックスRnew タング=ぺバックスという構成のTECHビンディング対応(フレームビンディングとの組み合わせも可)のアルパインツーリングスキーブーツです。
マエストラーレ(左)とゲア(右)
スカルパのマエストラーレシリーズが販売開始されたのは2010-2011シーズンでした。4バック+1ベルクロというハイサポートブーツでありながら、ウォークモードで直立状態まで可動するのが一般的だった時代にカフが前後39°の広範囲で動くという画期的な機能を備えていました。おまけに重量も軽く、足入れ感が良いということもあって大ヒット作となったのです(当時一番売れたモデルだったのではないでしょうか)。
翌年にはこれを3バックル化したラッシュ(メンズモデル)とブリンク(ウィメンズモデル)も追加され、用途にあわせた細かいニーズに応えつつ、価格面でも選択肢を増やしていったのです。
マエストラーレ 2010-2011モデル(初期型)
このマエストラーレシリーズは2017-2018シーズンにフルモデルチェンジを受けることになるのですが、ここで新しいテクノロジーが登場します。現物を見るとロアシェルに3点の固定でワイヤーが架けられており、そのワイヤーの途中の部分をバックルが締めあげる構造になっています。つまり、バックル一つで2バックル分のサポート感を得られるようにした訳です。3バックルにすることにより軽量化を推し進めて、4バックルと同等の高いサポート感を実現したのです。
いやぁ、良く考えました。高い滑走パフォーマンスを支える性能を保ちつつ軽量化も実現する。新世代のマエストラーレは更なる進化を遂げました。
ロアシェルに組み込まれたワイヤーとバックル
こちらもパワーベルトにRECCOが組み込まれている
実際に使ってみた感想(2017-2018モデルで試乗)ですが、高いフィッティングで剛性感も十二分にあります。このクラスとしては十分軽く、60°の可動域(ウォークモード)で登高時の足の運びも楽々です。
ハイサポート、ハイパフォーマンスのマエストラーレシリーズと、スピードツーリング向けのF1とではうまく作り分けされていて、乗り比べるときちんとキャラクターの違いが見えてきます。滑りのスタイルにあわせて選んでゆくと良いでしょう。
関東近郊では11/3オープン予定のスキー場もあります。
いよいよスキーシーズンが始まります。雪の上に立つのが楽しみですね。